名古屋大学 大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻

  航空宇宙機運動システム工学研究グループ

  Aerospace Vehicle Dynamics Research Group  

研究の概要


宇宙機力学からの視点によるユニークな能力の獲得と利用拡大を目指す

超小型衛星の特徴を生かすには通常サイズの衛星による従来手法をただ小型化するだけではなく、小型になるほど影響が大きくなる①現象を見出し②応用する事による、超小型ならではのユニークな能力の獲得が必要になると考えています。 本グループでは宇宙機が小型になるほど宇宙環境の影響を大きく受ける傾向にある事に注目し、この宇宙環境を宇宙システムの制御に応用して少ないリソースで高機能な超小型衛星バスシステムの構築を目指します。 さらに、これら超小型衛星ならではの技術を駆使した宇宙利用に関する研究を進めます。


宇宙環境が宇宙機の姿勢・軌道に与える影響の解明と応用

(超)小型宇宙機が大きな影響を受ける宇宙環境(特に磁場と宇宙プラズマ)に注目して、超小型宇宙機のa.能力とb.利用の拡大を目指します。 特に超小型宇宙機の姿勢軌道制御能力の獲得・改善による宇宙利用拡大を狙います。その他、宇宙システムの研究を実施します(C&DH、熱構造、通信、宇宙システム設計、宇宙利用など)。 また、検討のみに終わるのではなく実際に宇宙システムの設計と開発を実施し、提案手法についての宇宙実証にも挑戦したいと考えています。


宇宙システム


磁気ドッキングシステム

小型宇宙機の多数機運用を容易に 

近年、多数の小型宇宙機を一つのシステムとして運用する際の重要な一つの技術として衛星のドッキングが挙げられます。質量やスペースの制約が厳しい小型衛星においてドッキングを達成するために、 シンプルな磁石や磁性体を用いて誘導、結合把持、分離を1つのコンポーネントで達成できないか検討しています。より容易に複数宇宙機を用いたミッションの達成を目指しています。

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自律的な画像認識による効率的なリモートセンシング 

国土管理、森林管理、水資源管理、食料安全保障といった様々な目的で、人工衛星によるリモートセンシングが幅広く利用されています。このような状況において特に可視光におけるリモートセンシングにおいて雲といった障害物を避けつつ広い領域の情報を効率的に取得できる手法が必要となります。本研究では、自律的な画像認識により観測目標を認識し効率的なリモートセンシングを達成することを目的としています。本研究では雲の検知のためにCNN(Convolutional Neural Network)を用い、観測目標を直接検知するのではなく観測を妨げる雲を検知することでアルゴリズムを軽量化し、人工衛星の計算速度が遅い搭載計算機に実装可能としました。次に得られた雲情報と軌道情報を合わせることにより観測目標を検知することを検討しました。特に今回の姿勢変更では磁気アクチュエータより生成した磁気モーメントと地球磁場を作用させて行うことを考え、構築したアルゴリズムを小型衛星に実装し、軌道上実証の準備を進めました。本研究は、公益財団法人 JKA 2022年度 機械振興補助事業 研究補助「2022年度 衛星リモートセンシングを目的としたリアルタイム軌道上画像認識に基づく自律的姿勢制御補助事業」の支援を受け実施したものです。

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宇宙環境力を用いた宇宙膜構造の新たな姿勢制御手法 

電磁力を用いて宇宙膜構造を展開・姿勢変更する 

宇宙膜構造の展開や姿勢変更について電磁力を用いた新たな手法を検討しています。提案手法では銅フィルムを膜構造に配置し、フープ応力や宇宙環境磁場とのローレンツ力を用いて膜構造を展開、姿勢変更します。 電流を変化させることにより展開力を調整することや、姿勢を変更することができます。宇宙膜構造に新たな機能を持たせることも検討しています。

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宇宙機の軌道制御


磁気プラズマデオービット

姿勢制御用磁気トルカを軌道制御に応用する 

増加し続けるスペースデブリを抑制するため、運用を終了した低軌道人工衛星は、25年以内にデオービット(地球大気圏への再突入)をしなければならないという国際的ルールが定められています。 これは近年需要が増加している超小型衛星でも例外ではありませんが、超小型衛星は質量や体積、電力消費に厳しい制約を持つため、軌道制御能力を持たず、この25年ルールを満たすことができないという問題がありました。 そこでこの問題に対する解決策として、既存の衛星搭載機器を用いた手法である、「姿勢制御用磁気トルカを用いた磁気プラズマデオービット」を提案しています。 この手法は、小型衛星の姿勢制御で標準的に利用されている磁気トルカと低軌道上に存在する宇宙プラズマの干渉により、抗力を発生させるものです.。本研究では、この磁気プラズマデオービットにより衛星の軌道がどのように変化するのか、 また、磁気トルカを制御することによりデオービット時間を短縮することができないかについて検討をしています。 また、このプラズマ抗力を衛星の編隊飛行の形成や維持に使用できないかについても検討を進めています。

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宇宙機の姿勢制御


惑星間磁場を活用した姿勢変更

近年、より小型の宇宙探査機が提案され検討が進んでいます。本研究では惑星間磁場に着目し宇宙機の磁気モーメントと作用させて、姿勢を変更したり角運動量を管理する手法について検討しています。

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形状異方性による磁気トルク

小型衛星の受ける磁気の力を明らかにする 

慣性モーメントが小さな小型衛星では磁気トルクをはじめとする宇宙環境トルクからより大きな影響を受けると考えられます。特に衛星コンポーネントに含まれる磁性体の形状異方性により生じる磁気トルクに注目しています。 これは地球磁場により励起される磁気モーメントから生じ、非対称性の高い形状の磁性体ほど大きくなります。これまで磁気トルクは残留磁気モーメントにより生じるものがよく検討されてきましたが、この形状異方性による効果も大きいことが分かり、 姿勢制御精度を劣化させる可能性があることが分かりました。この形状異方性により生じる磁気トルクの解明により、小型衛星の姿勢決定・制御精度の向上を目指します。

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修士・学士論文


2022年度

修士論文

宇宙機の運動モデルと観測値による残差に着目したデータ駆動異常検知・判別,田村啓登
人工衛星の軌道・姿勢運動に着目した空気抗力モデルのオンライン同定,永井啓太
姿勢運動を考慮した電波による相対軌道決定,藤田剛輝
地球低軌道における磁気トルカと宇宙プラズマの相互作用による衛星の帯電,宮本岳瑠
Dynamics and Control for Spacecraft using Solar Sail to Achieve Displaced Orbit around Asteroid,Gu Xinbo

学士論文

磁気トルカと地球低軌道プラズマの相互作用による帯電の実験研究,宇佐見海渡
高速スピン衛星における渦電流テンソルの時間変化成分の軌道上推定,大脇敬介
軌道面外方向を考慮した人工衛星のスラスタレス編隊維持,蟹江颯

2021年度

修士論文

Design of Relative Orbits for Fuel-Free Formation Flight Using Rotation Separation, Benjamin Alan LEE
惑星間軌道における変動磁場を利用した小型宇宙探査機の角運動量管理, 大月洋貴
燃料消費量に対する衝突効果増分を考慮したKinetic Impactorの軌道最適化, 木村圭伯
超超小型衛星での相対軌道姿勢連成系における編隊配置の安定性解析, 野呂拓臣
磁気トルカと地球低軌道プラズマの相互作用から生じる力の実験, 増田裕明

学士論文

低軌道衛星の姿勢運動情報を用いた形状異方性による磁気トルクの解明,浮田大貴
自律的な衛星姿勢制御のための雲に着目したオンボード画像認識,大崎嵩友
姿勢・軌道の連成運動を考慮した宇宙柔軟構造物の挙動解析,坂口友太
低軌道上の渦電流トルクを考慮した高速スピン衛星の姿勢決定, 玉置尚也
人工衛星の軌道・姿勢運動を考慮した磁気分離機構による編隊形成, 安田豊

2020年度

修士論文

3次元表面反射を考慮した自由分子流の衛星姿勢運動への影響,岸信希
相対軌道運動を考慮した宇宙用伸展ブームの変形挙動,中山理志

学士論文

衛星姿勢制御を目的としたオンボード目標検出のCNN畳み込み層削減,上村帝人
平面円制限三体問題におけるカオス性を考慮した周期軌道での小天体の永久拘束,櫻井優斗
非線形な電波伝搬特性を考慮した衛星相対運動の推定,永井啓太

2019年度

修士論文

磁場変動による剛体回転運動の励起と宇宙機軌道変更への応用,稲川智也
姿勢センサの複合化による宇宙機の軌道運動推定,手嶋悠介
渦電流を考慮した回転運動推定則の構築と宇宙機への応用,後藤瑞樹
Agile three axis attitude control for underactuated Earth orbiting satellite using multiple rotations,Hoang Xuan Truong An

学士論文

惑星間磁場の宇宙機姿勢運動への影響に着目した角運動量管理,大月洋貴
非保存力を考慮した相対周回軌道と衛星編隊飛行への応用,野呂拓臣

2018年度

修士論文

地磁場環境下における宇宙膜構造の姿勢制御,倉橋直希
多連結衛星の回転と分離を用いた燃料フリーコンステレーション形成,松澤真司
相対軌道制御能力を有した磁気デバイスによる宇宙機ドッキング,山田裕己

学士論文

磁気センサを用いた宇宙展開膜面構造物の振動推定,片山光
地球低軌道衛星における搭載磁性体に生じる磁気姿勢外乱トルク,岸信希
超小型衛星における宇宙環境力を利用した非協力物体への接近軌道設計, 田村啓登

2017年度

学士論文

姿勢制御用磁気トルカを用いた小型衛星の編隊飛行, 藤原正寛
小型宇宙機における磁気姿勢制御を目的とした惑星間磁場推定, Hoang Xuan Truong An

2016年度

学士論文

地球低軌道衛星における磁性体形状異方性に注目した受動的姿勢制御, 長尾 茉奈
超小型衛星における宇宙プラズマ抗力を用いたデオービット, 松澤 真司
地球低軌道における環境磁場を用いた宇宙膜構造物の展開, 山田 裕己

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